農作物の鳥獣害軽減を(平成29年10月22日掲載)

 県土の84%を森林が覆う高知県。豊かな自然に恵まれた環境でありながら、山ではイノシシやシカなどによる鳥獣害が深刻化。今や市街地周辺でも被害が発生するなど、生産者にとって大きな悩みの種となっている。JAは2012(平成24)年度から県の業務委託を受け、鳥獣被害対策専門員を配置。「攻めと守り」の姿勢で被害軽減に当たる。対策の先進地である長岡郡本山町の古田地区を取材した。

▼「把握しやすい」

▼「把握しやすい」

 高知県がまとめた野生鳥獣による農林業被害は、16年度は約2億7千万円となっており、被害の内訳はイノシシ36%、シカ30%、カラス16%、サル9%、その他9%となっている。ピークとなった12年度の約3億6千万円を下回るものの、依然として対策を強化すべき状況が続いている。
 県は、12年度に県内9JAに10人の鳥獣被害対策専門員を配置。17年度までに13JA、16人に増員し、被害対策の窓口として実態を調査し、地域と共に考え、効果的な対策や技術の普及を行っている。
 JAに配置した理由を「被害者の声が集まり、実情を最も把握しやすいため」とし、15〜17年度の3カ年で、被害の大きい千集落のうち500集落を支援している。
 県内全域にネットワークがあり、地域に密着するJAと県が連携し、「集落ぐるみ」での課題解決に力を入れている。

▼いち早い取り組み

▼いち早い取り組み

 実際に支援の対象となっている集落が多数ある県北部の嶺北地域は、ブランド米「天空の郷」でも知られる米どころ。美しい棚田が広がり、「れいほく八菜」をはじめ、野菜や果実の栽培も盛んな食の宝庫である。
 実りが豊かな分、鳥獣による被害も大きく、10年以上前から収穫の頃を狙ってやって来るシカやイノシシに頭を痛めていた。生産者が各自で電気柵を張るなどの対策を行う中、6年前からいち早く地域全体を防護柵で囲う取り組みを行ったのが本山町の古田地区だ。
 同地区に住む右城悟さん(68)は、当時、近隣の地区に声を掛けて広範囲にわたって柵で囲うことを提案したが、設備投資の額が大きく、賛同を得られなかった。
 「収穫減はもちろんだが、イノシシが暴れ回って稲が倒されめちゃくちゃになる。そんな田んぼを見たらやる気が失せる」。農業への意欲がそがれ、地域の元気がなくなることがつらかったという。
 「このままではいかん! 古田だけでもやろう」と地区で話をまとめ、11年から2年がかりで総延長7640メートルを防護柵で囲み、被害をほぼ100%防ぐことに成功した。
 その後、周辺地区も追随し、13、14年に吉延地区、大石地区、権代地区が防護柵を設置し、本山町の吉野川南岸側の農作地域のほぼ全体を囲うことができた。地域全体での鳥獣被害は激減したという。

▼課題は開口部

 それでも、イノシシの侵入を完全に防ぐことができない原因が、人や車が行き来する道路にある。道路が防護柵の切れ目となり、イノシシの出入りが自由になる。開閉式のゲートの設置が一般的だが、通行者に負担がかかるため開けっ放しにされる懸念がある。
 12年から鳥獣被害対策専門員としてJA土佐れいほくに勤務する和田康司さんも、そんな経緯を見てきた一人だ。この開口部を閉じること、川の横断を阻止することが課題となっていた。
 嶺北地域は吉野川の南岸側と北岸側では鳥獣の分布状況が異なる。南岸はイノシシ被害が主だが、北岸はそれに加えシカ、サルの被害もある。今後、川を渡る知恵を付ければ北岸のシカやサルが南岸に移動してくる懸念もあるという。
 古田、権代地区で検討を重ねた結果、昨年11月と今年7月、道路の側溝に使われるグレーチングの網目をイノシシやシカのひづめより大きくした「テキサスグレーチング」を開口部2カ所に導入した。イノシシやシカは穴に足を取られるのを嫌がり、そこで歩みを止める仕掛けだ。早生(わせ)の稲が収穫を迎える前に設置が完了し、被害に遭うことはなかったという。
 設置後、動体検知により自動撮影するセンサー付き赤外線カメラを置いて、イノシシが実際にどのような反応をするかを検証しており、今後の対策に役立てていく。

▼“攻めと守り”

 県では「野生鳥獣に強い高知県」を目指し、鳥獣被害対策専門員と2カ月に1度連絡会を行い、このような被害状況や活動実績などを共有している。
 しかし、実際は侵入を防ぐだけでは害獣の数を減らすことにはならず、県は捕獲、駆除を行う“攻めと守りの鳥獣対策”に取り組んでいる。
 1人が30個まで仕掛けられるわなの見回り作業軽減のための技術開発や、わな、狩猟免許取得のサポートなど捕獲数を増やすための支援に力を入れているほか、ジビエ料理講習会など有効活用に向けた支援も考えている。
 県の担当者は「捕獲した有害鳥獣の有効活用には地域と密着したJAの組織力が欠かせない。捕獲の推進に向けて連携して取り組みたい」と話す。安心して農作物を作ることができる地域にするには、各地域で防除と捕獲に取り組み、安全に解決できる力を付けることが求められている。

《直販所見〜つけた》 やすらぎ市

《直販所見〜つけた》 やすらぎ市

 「道の駅やす」内にある「やすらぎ市」。ハウス園芸が盛んなこの地域の特産品といえば、夜須のフルーツトマト(1〜5月)、エメラルドメロン(10月下旬〜8月上旬)、ルナピエナスイカ(11月上旬〜6月下旬)。贈答用にと買い求める人も多く、予約もできる。
 売り場にはトマトが出始めた。これから徐々に糖度が上がり12月ごろにはフルーツトマトが人気を集める。野菜や果物の豊富さに加え、海の幸も自慢で、漁がある日は午前10時半に西分漁港から、午後3時半に手結漁港から新鮮な魚が届く。
 また、「キッチンマーメイド」というオリジナル加工品ブランドがあり、地元の「イクヒカリ」という品種で作った米粉パンや、地元の果物で作ったジャム、特産の赤ショウガの加工品などがある。米粉パンにも地元の野菜や果物が使われており、間もなく苦味を生かしたゴーヤーパンがお目見えする予定だ。11月5日は午前10時から正午まで、赤ショウガシロップの試飲販売を行う。これからの季節はお湯で割ってホットがお薦め!
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 所在地  香南市夜須町千切537−90 (道の駅やす内)
 生産者  216人
 売場面積 約55平方メートル
 営業時間 11〜1月(午前8時〜午後5時)
      2月〜10月(午前8時〜午後6時)
 休み   元日〜1月2日
 駐車場  76台

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